ラベンダーと星空の約束
「ああ、アレは亀さんからのメールを見てたんだ。
あの先生に見られた女遊びの兆候と、去年亀さんがあのしつこい先生を黙らせて、T大じゃなくW大を受験したっていう事実から考えて、
亀さんなら、先生の女関係の弱みを握ってるんじゃないかと思ったんだ。
それで机の下でこっそりメールを打ったら、すぐに返信してくれた。
長引かずに済んで、亀さんに感謝だよな」
亀さんが教えてくれたのか……
何か納得。
去年の文化祭を思い出していた。
柏寮のあのハチャメチャなステージの申請は、一度は実行委員会に拒否されていた。
でもその後、亀さん経由で再申請したら、すぐに通ったって言ってたよね。
その理由は確か、去年の生徒会長の弱味を亀さんが握っていたからだと、瑞希君が教えてくれたんだ。
「亀さんて…
敵に回すと恐いよね……」
ぽつり呟く私に、瑞希君はこっそり耳打ちする。
「亀さんもそうだけど、大ちゃんも十分恐いよ。
紫ちゃん気をつけて、奴も結構黒いから」
私達がヒソヒソ喋るのを全く気にしない流星は、さっきからスマホで何かを検索している。
そしてそれを私に見せてきた。
「紫、再来週の日曜日、これを見に行かない?」
流星のスマホを受け取って画面を見る。
それはある写真展の広告ページだった。
『我妻ミチロウ 〜彩の写真展〜』
そう題されたその写真展は、都内の某百貨店の催事スペースで開かれるらしい。
“我妻ミチロウ”と言う写真家の名前を聞くのは初めてだった。
彩の写真展か…
きっとフラノの夏の景観の様に、色彩豊かな風景を撮る写真家なのかな。
それは是非見てみたい。
うちの店で販売する写真の参考になるかも知れないし。
「行きたい!絶対に行く!すっごく楽しみ!!」
「ハハッ 予想以上の食いつきだな。
瑞希もどう? 一緒に行かない?」
「写真展ねぇ… うーん…
僕はいいや、あんまり興味湧かないし。
それに、2人のデートの邪魔するのもアレだしね」