ラベンダーと星空の約束
 


「デートか…
そう言えば、俺達って、まともなデートしたこと無かいよな」




流星に言われて私も気づいた。



映画とかショッピングとか、レジャー目的で2人で外出した事はない。



2人切りの外出がなかった訳じゃなく、月に一度は必ず電車に乗って外出してるけど…

それは私の病院の、定期受診の為。



病院帰りにドーナツ屋に寄ったりハンバーガー食べたりしてたから、

少しはデート気分でいたものの、まともなデートとは…言えない。



そっか…彩の写真展を見に行くのが、私達の初デートになるのか……



半同棲状態の私達の関係でも、

『初デート』と言う言葉には、何か心浮き立つ物を感じる。




「瑞希君、デートって何着て行けばいいのかな?
鞄は?靴は?メイクした方がいいと思う?」




「へ〜珍しい〜

紫ちゃんが女子高生の顔してる〜」




「珍しいって何よ…
間違いなくいつも女子高生の顔してるでしょ?」




「恋愛にウキウキしてる所は、あまり見たことないって言う意味だよ。

こういうのもいいんじゃない?
今更な初デート、楽しんできて」




「今さらな初デート?」




「そう!今更な初デートの日は、可愛げのない君を、僕の技術で可愛く仕上げてあげるね。

紫ちゃんって大して服持ってないし、僕のワンピース貸してあげる。

メイクも僕がするよ。

君が自分ですると、オバケになりそうだし、髪型もアレンジしてみよう」




「なんか…酷い事いっぱい言われたけど……よろしくお願いします」




「任せといて〜その代わりお土産宜しくね!

〇〇の秋の新作ケーキ、調度発売するんだよねー。

和栗のモンブランと、キャネルキャフェと、シャルロットポワール買ってきて」





私と同じくらい、瑞希君も楽しそうな顔をしていた。



お土産のケーキが楽しみだと言うだけの笑顔じゃない。



私の顔に髪に制服に、視線を巡らせながら、どう作り上げようかと考えているみたい。



生き生きとした瞳を向ける彼の頭の中では、

きっと当日のファッションコーディネートとヘアメイクが、既に始まっているのだと思う。



瑞希君が選んだ美容師の道は彼に向いている。



好きな事を職業に出来るなんて素敵だね。



私達3人の将来設計は間違えていない。

間違えているのは、やっぱりあの先生だ。




< 555 / 825 >

この作品をシェア

pagetop