ラベンダーと星空の約束
 


今年の夏に富良野でみんなで写した写真や、

亀さんとたく丸さんの卒寮前に5人で写した記念の写真もある。



大樹のバカ話しを楽しく聞きながら写真に触れていると、

ピンが外れ、写真が一枚ハラリと落ちた。



落ちた写真は一年以上前に私が撮った写真。



まだ金髪に近い明るい髪色をしていた頃の流星が、

夕暮れの柏寮の廊下の窓から顔を出し、

カメラを向けている私に笑顔で片手を上げている。



この時の流星は私の事を「ゆかりちゃん」と呼んでいて、まだあの夏を思い出していなかった。



流し素麺大会の特別賞と称し、自作の『夏の星空観測ツアー御招待券』をくれたんだ……



それから私達は多摩川縁に行って星を観た後…

流星が告白してくれた……




この夕暮れに染まるノスタルジックな柏寮と、

橙色の光りを髪に…顔に…纏い、美しく笑う流星の写真は、

あの時の驚きと喜びを、思い出させてくれる……




その写真が…… 落ちた。



数ある写真の中で柏寮と流星だけが、

何かを暗示する様にハラリと宙に舞い……

一回転してストンと…落ちた。




そして、その翌日……


現寮長である流星に学校の事務の人から、一枚のプリントが渡された。



味も素っ気もない、白い紙に書かれていたのは…

柏寮の終わりを告げる言葉。




『柏寮の取り壊し、退去、及び寮生の待遇についてのお知らせ。


退去刻限 1月15日

解体工事予定日 2月5日



特待生優遇処置である柏寮賃料免除の待遇は、同建造物解体と共に………――――――――――――――――――――――』





柏寮の終わりが決まってしまった……



後少しで私達の大切な住まいは消えてしまう……



沢山の思い出の詰まった柏寮との別れは、辛くて淋しい。



でも大丈夫。
覚悟はしていたから。



最後は笑って柏寮に

「ありがとうお疲れ様でした」と言いたいと思う。



その夜、流星の部屋に集まり3人で相談したのは、柏寮を出てからの住む場所の事。



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