ラベンダーと星空の約束
 


当然恥ずかしくて、黒じゃなく赤猫になっていたけど、それは始めの数分だけ。



適応能力が高いのか、それとも私の羞恥心なんて、たかが知れてるのか…

一度開き直ってしまえば、後は全然問題なかった。



見たいなら見ればいい。
写メ撮りたいなら撮ればいい。



その代わり…

中に入って、コーヒー1杯くらい飲んでいって貰いますよ?ふふふっ……




そうやって招き猫をしていると、知ってる人も知らない人も声を掛けてくれるし、

得する事もあって、案外楽しくなってきた。




「喉渇いた…ニャ」と言えば、

名前は知らないけど、顔だけ知ってる他クラスの男子が、ジュースを差し入れてくれた。



「お腹空いた…ニャ」と呟けば、

自称卒業生のお兄さん達が、タコ焼きとか焼きそばとかクレープとか…

食べ切れない程買ってきてくれる。



招き猫も悪くないニャ!



そんな風にクレープを頬張りながら招き猫を楽しんでいた時、

流星と瑞希君が2人揃ってやって来た。




2人には「うちのクラスは猫カフェ」としか説明して無かったから、

この衣装と役割に驚かせてしまった。




瑞希君は…


「それって…天然?計算?

最近の紫ちゃんは悪女になってきたよねー

男に猫撫で声出して貢がせてるよ、怖〜い!

でも黒猫コスプレはいいねー!超可愛い!僕も着た〜い!貸して〜」


と言いたい放題言ってくれて……




流星は…


「怒るよ…?」と笑顔でこめかみをひくつかせ、

文化祭の途中なのに、私は担がれ柏寮に強制送還。



その後、流星に何をされていたのかは…御想像にお任せします。




 ◇◇


そんな風に平和に文化祭が終わると、大樹からの電話で、富良野に初雪が降ったと、初冬の便りが届いた。



月日が過ぎるのはあっという間…

今年もまた雪の季節が来る……




自室でスマホを片手に、大樹と他愛のない話しをしながら、

壁のコルクボードに貼られた写真達を眺めていた。



カラーピンで止めたそれらの写真は、どれも思い出深いものばかり。



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