ラベンダーと星空の約束
 


根拠はないけど繰り返し自分に言い聞かせる事で、何とか気持ちを立て直す。



流星は大丈夫…大丈夫……

心配し過ぎはダメ…しっかりしないと……





北風がガタガタと窓硝子を揺らした。



その音でハッとして意識を戻すと、いつの間にか部屋の中は薄暗く、夕暮れ時もとうに過ぎていた。



瑞希君が出掛けてから2時間半が経つけど、まだ帰って来ない。



部屋の明かりを点け、カーテンを閉めようと窓際まで歩く。



窓の外は雪が降り出していた。



分厚い灰色の雲に覆われたクリスマスの空。

湿り気を含んだ大粒の重たい雪が、風に煽られ斜めに降りてくる。



ハラハラ…ハラハラ……

ハラハラ…ハラハラ……



舞い降りるその雪は街灯に照らされ、黄みがかって綺麗に見えない。



富良野に降る雪は荘厳で…

田畑も家も、木々も人も…
圧倒される程の威力で全てを白に染め上げて…

自然への畏怖を抱くと共に、ただ単純に美しいとも思う。



でも今見ている雪は…
世界を白く染めてはくれない。



道路に触れた瞬間、溶けて無くなり…

アスファルトを暗く濃い灰色に変えるだけ……



日が落ちて降り出した雪。

ホワイトクリスマスになったと、それを喜び歓迎する人がこの町には沢山いるんだろう。



だけど私は…
止んで欲しいと天に願った。



積もらずに消えて無くなる雪の、無惨な姿を見たく無かった。



流星まで消えてしまう様な気がして…

また不安が濃くなり…怖くなった。



カーテンを勢いよく閉め、部屋の明かりを点けた。



いつもの見慣れた光が、この部屋の流星の持ち物達を明るく照らし、少しだけ気持ちが上向きになる。



大丈夫だよ……

瑞希君が帰ってきたら
「意外と元気そうだった」と、きっと良い報告が聞ける。



心配し過ぎは私の為にも流星の為にも良くない。



大丈夫だから…


流星は消えたりしないから……




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