ラベンダーと星空の約束
「大ちゃんのお父さんに、僕が来た事は内緒にしてくれる様に頼んできた。
今は騙された振りしようよ。
大ちゃんの嘘メールを君が見抜いたと知ったら、きっと高熱の最中に、元気さを装った長文メールを何度も送って来ちゃうよ。
今は大ちゃんに余計な心配を与えちゃダメだ。
面会謝絶の札が取れて直接話しが出来るまで、騙されていよう?
回復に専念できる様に」
「うん…分かった…」
瑞希君の言う通り、流星の入院を私が知ってると言ったら、
彼は自分の回復より、私を安心させようと必死になるだろう。
私の為に付いてくれた優しい嘘は…全然嬉しくないし、
淋しくて悲しくもあるけど、それは私の自業自得。
流星が嘘を付かねばならなかったのは、過剰に心配する態度を取ってしまった私のせいなのだから。
流星の支えになれないのは歯痒いが、今は瑞希君の言う通り、黙って騙されていよう。
流星の回復を祈りながら……
◇◇
5日間の学校閉鎖が終わり、学校が2日あって、その後冬休みに入った。
まだ外出禁止期間で学校に行けずに冬休みに入った私に、真由と千絵梨がプリントと冬休みの宿題を届けてくれた。
冬休みに入ってすぐに富良野に帰るつもりでいたけど、今回は諦めた。
流星が苦しんでいる時に、富良野に帰る訳に行かない。
去年の冬休みは私が入院していたから、雪の富良野に帰れなかった。
そして今年も、美しい銀世界を見る事はできなそう……
瑞希君は年越しの一晩だけ実家に帰り、すぐに柏寮に帰ってきてくれた。
実家からお節料理やお雑煮セットまで持ってきてくれて、私も少しだけ正月気分を味わう事が出来た。
私の事はいいから、お正月は家族とゆっくり過ごしてと言ったのに…
こうして帰って来てくれた瑞希君は優しい。
面倒見のいい彼の存在は私にとって、寮の仲間以上の…
姉、いや兄?の様な存在になっている。
流星からは時々メールが届いていた。
美沙子さんの実家はこうだとか、正月に何をしたとか、内容はもちろん嘘ばかりだけど、
メールを送れる状態にあるという事実が、幾分私をホッとさせる。
『正月、富良野に帰るんだよね?』
とメールで聞かれたから、
『既に帰ってる』
と私も嘘の返信をする。