ラベンダーと星空の約束
 


私の誕生日、8月7日は北海道の七夕の日。



夜空を流れる天の川が、肉眼でもはっきり見える。



綺麗……

小さな星達が集まり星雲となり、北から南へと、夜空に青白い光りの帯をなす。



その天の川を挟み白く明るい光りを放つのは、琴座のベガ(織り姫)と鷲座のアルタイル(彦星)。



七夕の今日、2つの星は再会を果たせても、

私と流星は…あれから離れたまま。



どこに居るのか何をしているのか分からない彼を、私はこうして待ち続けている。



流星が私の下を去ったのは、私が17歳の冬、まだ高校2年生だった頃。



あれから2年半が過ぎ…

『まだ』2年半と言うべきか、

それとも『もう』2年半と捉えるべきか……



子供の頃の私は、再会までに5年も待っていたのだから、今はまだその半分の年数しか経っていないと思うけれど、


その一方で、期限付きの流星の命を想い、焦りと共に過ぎ行く日々を恨めしく思う。




小さく溜息をついた時、


「また、てめぇは星見てんのか…」

そう声がして、振り返らずとも大樹が来たのだと分かる。



晴れた日の夜、こうして星を眺めていると、決まって大樹がやってくる。



別に星を見ながら泣いたりなんてしないのに、

こうして隣に立ち空席を埋めてくれるのは、大樹なりの優しさなのだろう。




「今日の星空は凄く綺麗だよ。

雲がないから良く見えるの。

吸い込まれそう…」





そう言うと、大樹も釣られて天を仰ぐ。



星に興味の無い大樹ならきっと

「動きのねー物は面白くねーよ」

と言うと思ったのに、今日は何故か黙って星空に見入っていた。




私達の視線は瞬く星達に…

私の心は流星に……



隣に立つ大樹の心は…

流星と私の、2人の未来を憂いている…そんな所だろう。




無言の時間が数分流れてから、大樹がぽつりと呟いた。




「悪いな…あいつを見つけてやれなくて…」



「大樹のせいじゃないから謝らないで。

大樹は頑張って捜してくれた。ありがとう、感謝してるよ。

捜し方は問題ありだけどね」





そう、大樹は必死に流星を捜そうとしてくれた。



おかしくなっていた私を助けに来てくれた日から、大樹は1ヶ月も帰らずに東京にいた。



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