ラベンダーと星空の約束
 


見慣れた景色が映り、リポーターが紹介しているのは…


残念ながらうちではない、別の観光農園だった。



『ここ“ファーム〇〇”ではラベンダーの精油を―――…』




あー…やっぱりあっちに行っちゃったか…


フラノと言えば『ファーム〇〇』


自前のラベンダー精油工場を持っているのはあそこだけ。



ラベンダー畑も物凄く広いし、うちとは規模が桁違い。



うちの店はあそこのおこぼれを頂戴している様なもの。

メディアに注目されなくても仕方ないのだ。




でも…

もしテレビにファーム月岡が映ったら…

流星がどこかで見てくれるだろうか?



そんな事を考えてしまった。



テレビに映ったラベンダー畑を見て、

私に会いに行こうと…思ってくれないかな…



何でもかんでも流星に結び付ける癖がついていた。



4年も前のひと夏の初恋…

それを私は引きずり続けている。




流星に会いたい…




胸に苦しさを感じた時、フラノ中継は終わり、画面はスタジオに戻された。



女子アナの綺麗なお姉さんが、今度はフラノに関する書籍の紹介を始めた。



画面に映るのは紫色の本。



それを見て…

息が止まった。



心臓がドクンと大きく跳ね、驚きの余り呼吸すら忘れてしまった。




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