初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「そうだね」
ポケットに手を入れて、私の斜め前を歩く南雲くん。
その背中は思っていたよりも大きくて。
…何を話していいかわからない。
男の子と2人きりなんていう状況、そもそも免疫がないわけで。
こういう時、普通はどんな会話をするんだろう。
自分の人見知りを呪っても仕方なくて、せめてその大きな歩幅について行こうと足を動かす。
夕焼けが照らす2人の影に、何故だか更に緊張が増して。
…なに、話せばいいんだろう。
つまらないって、思ってるんだろうな。
いつだってそう。
面白い話もできなくて、話しかけてもらっても楽しい返し方がわからない。
「北山さんってさ、思ったより抜けてるよね」
不意に破られた沈黙。
…え、それ、どういう意味…。
「そんなこと、ないです」
「あるでしょ。なんか欠けてる」
「う…」
たしかに友達にもよく言われるけど。
「…あ、じゃあ、私こっちなので…」
2人の家の真ん中の道路で、立ち止まる。
「送るけど」
「すぐそこなので、大丈夫です!
荷物、ありがとう…」
「…そう」
そう言ってバッグを私に渡した南雲くんは、道路を渡って反対側に。
「…っ、はぁ」
緊張、した。
緊張で詰まっていたような息を吐き出して、私も家に向かった。