初恋が君だなんて、ハードルが高すぎる。
「…さん……北山さん」
「っ、はい!」
さっきからずっと呼ばれていたらしいことに気付いて、はっと我に返る。
「どうかしたの」
「あっ、いや、すみません…」
南雲くんは待っててくれてるみたいだし、早く書かなきゃ。
そう思って、来室者の名前を写す。
「終わった…」
何時ものくせで時計を見ると、4時。
30分もかかってしまった。
南雲くんを見ると、
「お疲れ」
と言って、自分のバッグを肩にかけた。
そしてドアの方に向かう南雲くんに、どうしていいかわからない。
これって、一緒に帰るのかな?
迷惑じゃないかな。
いや、でも、待っててくれたのかな。
好きな人すらいなかった私は、こんな経験をしたことがなくて。
だからどうしたらいいのか全然わからなくて。
でも、そんなの聞けなくて。
頭の中でぐるぐる考えながら、ドアを開ける南雲くんの背中を見つめていると。