華は儚し

また母の噂を聞いてしまいました。


売れ役者の父と夜に会っては、

見送りと称して花街から消息を絶ったそうです。


「もともと、

霧里太夫はここの花魁で今の太夫と同じ顔」


分かっています。


私は生まれてはいけないんだって。


考え事をしていて、

目を開ければそこには

憧れの宗十郎様がいました。


「どうかしたのか、具合でも…」


「大丈夫ですよ、お注ぎいたしますね」

< 64 / 221 >

この作品をシェア

pagetop