イケナイ狼君の××。


「あんな表情ってなに?」

「あ?お前気付かなかったのかよ」


気づくもなにも!
私仁のこと全然知らないから!


「お前見てる時の柔らかい仁の表情…
女に対して今まで見たことなかった」

「柔らかい表情…」


そんな顔してたかと記憶をたどる。
だけど私の頭にはそんな仁の表情は現れなかった。
逆に悪戯っぽい表情ばかりが思いつく。


「ところで、俺がこんなことしておいてアレだけど…
お前は仁のこと好きなのか?」

「へっ!?
ないない!仁はわたしのご主…じゃなくて、ただの友達だし!」


ついご主人様って言うところだったぁ…!
仁のせいで身体に染み付いちゃったよ!


「へぇ…
じゃあ俺が全力で奪いに行っても文句はねぇと…」

「え?」


フッと笑うコウ。


「お前確か一週間ごとに変わるんだよな?手伝う奴」

「そ、そうみたいだね…」


未だに納得いかない鹿男の提案。


「一週間…
まぁ、そんだけありゃあ十分だ」

「なんのこと?」

「お前みたいな鈍感野郎は知らなくていい」


な、なにそれー!
私って鈍感なのかな…?


「とりあえずコーヒー淹れてくれ」

「砂糖は?」

「10個」


…はい?


「10個…?」

「それが俺の砂糖の量だ。
覚えとけ」


10個も入れたらコーヒーじゃなくなる気が…


「…なんだよ?
なんか文句でもあんのか?」

「い、いえ…何もないです…」


素直に私はコーヒーに砂糖10個入れた。

それにしてもさっきのキス…
コウは何事もないようにしてるけど、なんでキスなんか…


「おい、なにつっ立ってんだ。
早くコーヒーよこせ」

「あ!ごめん!」


持っていたコーヒーカップをコウのデスクにそっと置く。
初めてコウが仕事している姿を見た。
真剣に書類に目を通すコウの姿にドキドキした。

…コウってかっこいいよね…
綺麗な銀髪だし、瞳も綺麗だし…


「ひかり…」


どうしたらそんなに細くなれるんだろう?
今度時間あったら聞こっかなぁ。


「おい、ひかり」


肌も綺麗だよね…
手入れとかしてるのかな?
してなかったらすごい!


「聞こえてんのかひかり」

「…へ!?は、はい!」

「そんなにジッと見られっと仕事しづれぇんだけど…」

「ご、ごめん!」


2人して赤面する。
でもなんだか居心地がよかった。

私、もしかして…


「ひかり、ちょっとこっち」

「な、なに?」


コウの傍に寄る。
そっと私の顔に近づくコウ。

ま、待って待って!

ギュッと目を瞑った瞬間、腕をグイっと引っ張られた。


「ひゃっ!」


気づいたら、コウの膝の上に座っていた。


「な、なにするのいきなり!//」

「お前、なんか変な期待しただろ?」


少しニヤニヤしながら言うコウ。


「し、してません!//」

「正直に言えよ。
俺にキスされたかったんだろ…?」


そんな上目遣いされたら…

コウに聞こえそうなくらい鼓動がうるさい。


「そんな…こと…」

「お望み通りしてやるよ…」


そっと唇が触れる。
さっきの深いキスとは違って、すごく優しいキスだった。

なんでだろう…
すんなり私受け入れてる…

会って間もないのに、コウにされるキスは嫌じゃなかった。
むしろ嬉しく感じた。


「…もう少ししていいか…?」

「…うん」


私を求めるようにキスをするコウ。
どこか寂しさを感じた。
私はそんなコウを包み込むようにキスを受け入れた。


「…はぁ」

「…ひかり、俺…」


ドキドキ


「俺さ…」


次の言葉を待つ。

ど、どうしよう…!//


「……すー…」

「…え?」


いきなり目を閉じるコウ。

ちょ、ちょっと待って…
もしかしてまた寝てる!?


「もう!コウのバカ!」


だけど…なんかかわいいかも。

子供のように私に寄りかかりながら眠るコウ。
そんなコウの姿を見ていて、初めて愛おしいと思った。

なんだか私…コウが気になる…





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