イケナイ狼君の××。

ほんとの気持ち。


ひかりside


ミーティングから二日。
今日から本格的に文化祭の準備が始まる。
私達の学校では、文化祭の準備期間中一切授業をしない。
全部の時間を文化祭へ費やす。
文化祭は他の学校の人、地域の人達、時には遠征してくる人達までいるくらい有名らしい。
一年生の時の私は興味があまりにもなくて、ここの文化祭が有名なことすら知らなかった。
その時の私はというと…
クラスのみんなから仕事を押し付けられて、ほとんど1人でやっていた記憶しかない。
先生が手伝ってはくれたけど、クラスのみんなは誰1人として手伝ってはくれなかった。


「今日から文化祭の準備かぁ…」


生徒会では、クラス全員の経費やら補助を担当する。
私は秘書だから、コウと一緒に行動することになった。
…はずなのに。

プルルルル

コウの部屋で作業をしていると、私の携帯が鳴る。

仁かな…?

未だに仁のアドレスしか入っていない私の携帯のディスプレイを見る。
仁からしかかかってこないはずなのに、知らない番号からの電話。

誰?


「どうした?ひかり」

「へ!?
あ、ううん!何でもないよ!」


急いで電話に出る。


「もしもし!」

『やっと出た!
遅いんだけどー!』


電話相手は女の子。
全然聞き覚えのない声だった。


「ど、どちら様…?」

『それは後で言うから!
今から2年B組に来るように!』


プツッ

女の子はそれだけ言って電話を切った。
私は何がなんだかわからない状態で固まってしまう。

嵐のように喋って嵐のように切った…


「フッ…」


いきなりコウが笑う。
最近の無理をしている笑いとは違う、自然な優しい笑顔だった。


「ど、どうかした?」

「いや、なんでもねぇよ。
行ってこいよ」

「えっ!?」


な、なんでコウ知ってるの!?

さらに頭が混乱する。


「早く行け」

「は、はい」


コウに言われて会計室を出る。

そういえば2年B組って…
私が通うはずだったクラス…

今思い出すとなんだかなつかしい感じがする。
1回も教室には入ったことはない。
場所くらいならわかる。
だけど気づいたら足が止まっていた。

行きたくない…

自然とそう思ってしまう。
同じクラスに1年の時イジメてきた人達がいるとは限らない。
だけど怖かった。

私ちっとも成長してない…
頑張らないと…!

そう思った瞬間、


「なにボケっとしてんだアホ」

「ひゃ!」


後ろからいきなり頭をポンポンされた。
振り返ってみると、仁がいた。


「じ、仁…!」

「お前もしかしてこれから校舎行くんか?」

「あ、うん…」


下を俯く。
さっきは頑張ろうと一瞬思った。
だけどやっぱり怖い。


「…ったく、世話がやける」

「へ!?」


仁が何かボソッと言ったかと思ったら、いきなり私をお姫様抱っこする。

ちょ…!
なにこれ!?//


「お、降ろして仁!」

「ヤダ」


悪戯っぽく笑う仁。
その表情にドキッとしてしまう。


「あ、そうだひかり」

「な、なに…?」

「お前、三つ編みやめてメガネ外せ」

「へ!?」


唐突な命令。

そ、そんなことできないよ…!
地味でいないと目立っちゃう…!


「まったく。
ほんとわかりやすいなーお前は」

「え…」

「まーた目立ったら逆にイジメられるとか思ってんだろ?」


う…

私の思っていることを見透かす仁。
出会った頃からそうだった。
仁に隠し事はできない。


「オレがいても不安だって言いてーのか?」

「え…?」

「しもべのクセに、オレに楯突く気か?」


壁に押しやられる。
数10センチしか離れていない顔。
ドキドキして心臓が破裂しそうだ。


「し…もべじゃない…」

「声震えてんぞ…
なんだ、ドキドキしてんのか?」

「ちが…!」


否定しようとした瞬間、仁にキスをされた。




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