田中のくせに!!
「…おまえは俺に、なんか恨みでもあんの?」
「…すみませんでした……」
美味しそうなソーキそばの向こうから、恨めしそうな田中の視線が送られてくる。
あたしに突き飛ばされ全身びしょ濡れになった田中は、一旦ホテルに戻り着替えてくる羽目になった。
ただし髪の毛を乾かす時間まではなく、濡れたまま。
「まぁまぁ、いいじゃん!
おかげで面白いもの撮れたしー!」
そう言ってデジタルカメラを見せてくる友梨。
そこにはあたしに突き飛ばされ、海に落ちる瞬間の田中が映っていた。
「この田中の顔うけるー!」
「あはは、ほんとだ。
後で焼き増してちょうだい」
「あたしもー」
「おまえら!!!」
盛り上がり始める皆に、田中がキレた。
「まぁまぁ」
「おまえのせいだろ!!」
宥めたあたしに、田中がクワッと目を剥く。
「…スミマセンデシタ……」
だってだって。
腕を引っ張られた瞬間、「はなれんなよ」って言われたことが不意に蘇ってきて
なんか、どうしようもなく恥ずかしくなったというか…
「ったく。早く食べようぜ、のびる!」
仏頂面のまま、田中が麺をズズッとすすった。