落雁

スーパーとくまるを出て、金髪は早足でどこかに向かった。

「火緋ってのは知ってるよな??調子乗ってるみたいで、司に喧嘩売るようになってんだよ、最近。今までは無視してたけど、なんであいつ急に…」
「タツルってやつ??」
「お前なんで知ってんだよ」

向かったところは、大分前に伺った金髪の家だった。

「バイク?」
「遠いんだよ、火緋の住処は。で??お前は来んの?来ねぇの?」
「行くに決まってんだろ」
「だよな、面倒くせぇ」

金髪はバイクに被せてあるブルーシートをとる。
そしてあたしに、黒いヘルメットを投げた。

「来るなら後ろ乗ってけ。事故っても知らねぇからな」

金髪はバイクに跨った。

「乗り方わかんない」
「んなもんチャリと一緒だよ、早くしろって」

どこに座っていいのかもわからないまま、金髪の座っている後ろに跨った。
ヘルメットが埃臭い。大分眠っていたようだ。そして、重い。

あたしが座ると確認すると、金髪はバイクを発進させた。








□ □ □



「さっむい!!!!バイクっていいことねぇな!!怖いし!!」
「うるせえ!!じゃあ乗るんじゃねぇよ、ついてくんな!!」

数十分走ったところで、バイクは止まった。
大分都会な所だ。

「お前怪我するぞ?俺が司連れてくっから、ここに居たほうがいんじゃね?」
「むしろ好調だって。今日ジャージだし」

あたしがそう言うと、呆れたように顔をしかめる。
そのまま歩いていってしまった。

「こっから歩いてすぐのマンションに火緋っつー性悪人間の集まりがある」
「マンション??住んでる人も大変だな」
「管理人も住人も火緋とは仲いいから関係ねぇよ」

金髪は指をぼきぼきと鳴らす。

「司、1人で行ったの??」
「いや??さっき電話したやつが居るだろ?あいつのバイクの後ろに乗ってったらしい」

古いマンションが見えた。
さっきまでは普通の民家があったのに、裏路地に入ると人が少ない。ここら辺は治安が悪そうだ。

「おい、田舎女。お前一瞬ここで待ってろ」
「は?!あたしも行く」
「わかってるっつの。ここに司が居るか確認するだけだって。3秒3秒。待ってろ」

そういって、金髪はマンションの中に消えた。

しかし、5分経っても戻ってこない。

何もしないで知らない土地に突っ立っているのは心苦しい。
あたしもマンションの中に入った。

< 213 / 259 >

この作品をシェア

pagetop