今昔狐物語

飛牙は一体どういうつもりなのだろう。

これではますます自分を嫁にするなど不可能になるではないか、そうちよは思った。


「ふざけるな!畜生め!!おいらの妹を返せ!!」

「俺は妻と子供両方だ!!」


やはり男達の反応は最悪だった。

当たり前だ。

飛牙もそれは覚悟していた。

そして彼は、たった一言を言うために座り込んだ。



「…すまなかった」



一瞬、辺りが静寂に包まれた。

男達の罵声は消え、息を呑む小さな音だけが微かに聞こえるのみ。



「ひ、が…」


この瞬間、ちよは心から思った。


――彼を赦そう


誰もが彼を責めるなら、せめて彼の過去を、心を知る自分だけは…。


――この悲しいお狐様を、赦してあげよう


 
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