今昔狐物語

ちよが自分の想いと向き合っていた時だった。


「あ、謝って済む問題じゃねぇ!!喰われた女房の敵(カタキ)!!!!」

妻を殺された男性が、護身のため手にしていた農具用の鎌を振り上げた。

「やめて!!!!」

素早く反応し、咄嗟に飛牙の前に飛び出したちよ。

「危ない、ちよ!!」

父親と飛牙が同時に叫ぶ。



そして――


動いたのは飛牙だった。


「ちよ!!」


飛牙がちよを包み込む。

次の瞬間、ドスッという嫌な音を立てて、飛牙の背中に鎌が突き刺さった。


「ぐっ、あ゙ぁ…!!」

「…飛、牙…?」


庇うつもりが、庇われてしまった。


「っ…大事、ないか…?」

「私は大丈夫だよ!それより飛牙は!?飛牙っ!」


彼の背中を確認すると、着物にじんわりと血が滲んでいた。


 
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