人形の妹と王子の兄

「父親の転勤で俺は引っ越すんだ」

「!!?」


「…だからさ…

お前には言っておきたかった」


可憐はそう言ったらきっと泣いてしまうから。

彼女のこと思うなら秘密にするべきだった。

デートするとか嘘を言うしかなかった。


「もっと早く言えるはずだったけど、

言えなかったんだ…」



「…いきなり言われても

…遠いのか?」


「東京にいくんだよ。

だから少しだけ遠いね」

「遠いって…ここ兵庫だろ…」


深い闇がさらに

増していくのを肌寒さで感じた。


「…まあ、それだけ…」


「圭、いいのか?可憐のこと…」



「…俺は…諦めたくないよ…」


諦めたくないに決まってるだろう?
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