花とミツバチ



「お、おはよう」

「!」



一見いつも通りのその顔。ところが目が合った瞬間、彼はくるりと体の向きを変え廊下へと出て行ってしまう。



「?千葉くん?」

「……」



思わず後を追いかけるものの、千葉くんはスタスタと廊下を早足で歩く。



(?どうしたんだろ…)



あまりにも不自然なその様子に私は急ぎ足で追いつき、そのスーツの裾をくいっと引っ張った。



「ねぇ、千葉くんってば!」

「…、」



ようやく立ち止まったかと思えば、覗き込んだその顔は耳まで真っ赤に染まっている。



「あ…えと、これはその…」

「……」



昨日のことを思い出しているのか、ものすごい勢いで照れ出す彼にこちらまでつられて照れてしまう。


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