トリプルトラブル
 まー、本当のことを言うと……
専門学校が終わったら東京で働くと言う理由で免許証は取らなかったのだ。

それでも、免許の一番簡単な取り方はクラスメートに教えてもらっていた。

それはマニュアルではなく、オートマ限定で申込むことだった。
マニュアル車は操作が難しいけどオートマチック車は簡単らしいのだ。

まずオートマで取って、後で限定解除すれば良いらしい。

教習所によって料金は違うらしいが、技能講習数時間とか言っていた。


確かに私に免許があれば母は楽になるだろう。
でもあの時私はまだ十七歳だった。
だから私は免許を取れなかったのだ。


本当はお金を掛けたくなかった。

私は陽菜ちゃんの卒業に合わせて花屋になるための勉強をしなくてはいけなかったのだ。


「あの……オートマ限定で取ったら!」
私は直樹君に向かって叫んでいた。




 「オートマ限定!?」


「うん。操作が楽だから簡単らしいんだ」


「でも男がオートマってのもな……」


「後で限定解除すれば数日でマニュアル車ですが」


「えっ、あっそうなんだ。凄いな中村さんは、流石ママ……」

直樹君はそう言ったまま固まった。


(――ママって……
ママって一体何?
――確か前にも?)


「あっ、中村さんは何も心配しなくていいよ」

突然直樹君が訳の解らないことを言い出した。




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