約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く



無心に打ち込む私の相手をした後、
『山波君、随分と重い打ち込みになってきましたね』
山南さんのその言葉で、私はゆっくりと彼にお辞儀を済ませた。



「有難うございました。

 でも……びっくりしました。
 腕、全く動かないとばかり思っていましたから」

「多少は動きますよ。

 山波君の練習相手程度には、ですが神経が傷ついて、
 痺れが残るこの手では実戦で振るうことは無理でしょう」


無理でしょうと言いながら、
山南さんの表情はやっぱり曇ってる。


無理なのだと、そう思い込ませようと言い聞かせているみたいに。


木刀を壁に立てかけて、
負傷した山南さんの腕に自らの両手を触れる。


そしてゆっくりと、
思うように山南さんの腕をマッサージしていく。 


最初は戸惑っていた山南さんも、
私の指先の不思議な動きを食い入るように見つめる。


リンパの筋にしたがって、ゆっくりと滑らす指先。
指先を摘まんで刺激して、ぐるぐると優しくまわす。


手首から上へと、ゆっくりと指を滑らせていく。




「こうやって向こうの世界でも、やってたんです。
 お祖父ちゃんに稽古をつけて貰った後に。

 後は、私もやって貰ってた。
 
 これを毎日続けて、山南さんの腕から痺れがとれたらいいですよね。
 そしたら、そんな苦しそうな表情をせずにすむのに」



それが私の本音。


山南さんが苦しいことがあるなら、
ラクにして欲しい。



「山波君、有難うございます。
 気持ちよかったですよ。

 明里のところへ行きますが一緒にどうですか?」


「あっ、行きます。
 私、明里さん渡したいもの会ったんです。

 沢山は買えなかったけど、この間の御給金が出た時に
 高麗人参買ったんです。

 前に明里さんに山南さんが渡していたから」


「覚えてくれていたんですね。
 高価なものを有難う。

 私も寄り道して、高麗人参と私の薬を調達して
 行きましょうか」



練習に使った木刀を所定の位置に戻すと、
そのまま山南さんと二人で出かける京の町。



明里さんが住む長屋までの道程。


薬を買ったり、和菓子をかったり、
ショッピングを楽しみながら。



その時、山南さんが高麗人参を何時もより一袋多めに
購入していたのを見逃さなかった。



「山南さん。
 
 いつも二つなのに、
 今日はどうして三つもですか?」


「あぁ、もう一つは総司の為ですよ」

「沖田さん?」

「彼も異変が続いていますから」



突然の言葉に、驚きの色が隠せない。


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