約束の大空 2 【第三幕完結】※約束の大空・3に続く

60.晋兄が見つめる先 前編 - 舞 -



一度四国に逃げ伸びた晋兄はその後、長崎へと向かう。


長崎へ向かう頃には萩は益々、騒がしくなっていた。

長州のお殿様たちは幕府との次の戦に迎えて萩から山口へと引っ越しされたと言う、
噂が聞こえてくる。


逃亡先の晋兄のもとを日々、いろんな人が訪ねてきた。
そんなある日、「長崎に向かう」そう晋兄は私に告げた。



「晋兄、長崎って?」

「俺は次に備えればならない。
 その前に、一度山口に顔を出して挨拶だけしてこなければならないな」


そんな意味深な言葉を続ける。



「晋さま、お仕度は整っていますよ」


そう言って晋兄のお世話を甲斐甲斐しくするのは、
おうのさん、その人だった。


おうのさんとは、モトさんのところから下山した時が
私は最初に出会ったとき。

その時は、高杉さんっと晋兄のことを呼んでいた。
だけど今は、晋兄のことを晋さまって親しそうに呼んでる。

ここに来てから、ずっとそのことが気になってた。



「晋兄、雅姉さまは……迎えに行かないの?」

「晋兄は、おうのさんをずっと傍に置いてる」

「あらっ舞ちゃん、晋さまを困らせてはいけないわ。

 私はただ晋さまのお傍に居られたら、
 それで宜しいのですよ」


おうのさんは、そうやって言うけど、やっぱり私の心のもやもやは、晴れることはない。

おうのさんがもっともっと嫌な人だったら、
いっぱいいっぱい文句言って、追い詰めて、憂さを晴らすこともできるのかもしれない。


だけど……そんな人じゃないことは私が一番傍に居て知っているから。

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