恋愛メンテナンス
「明日はそっち泊まるから宜しくな…おまえも大変だろうけど、母さんたちの事は頼むなぁ…うんうん…照れ臭いからなぁ…」

輝、妹と話してるみたい。

更に聞き耳を最大限にする。

「おまえも、まだ落ち着かない時なのに悪いなぁ…いやぁ、やっぱり…なんつぅーかなぁ…何かもしあったら、側に居て守ってやれるのは俺だけだろ?…親父じゃ、ちょっと頼りねぇからなぁ…まぁ、そこだけが俺としちゃぁ心配なとこ…」

ズキンとした…。

今の言葉で、心臓に釘を刺されたみたいに。

「今は危ねぇ世の中だからなぁ…いやいや、だってさぁ、おまえの本心は分からねぇけどさぁ、本人じゃない俺に出来る事って言ったら…それしかねぇじゃん?…」

他人じゃ、私の気持ちなんて絶対理解して貰えない…。

そう言ってしまう自分に、彼が私の恋人になってくれた意味を、知ったように思えた。

側に居て、守ってあげる事しか出来ない。

それで…なの…?

こんな私を選んでくれたのは…?

ダメだ…これ以上はもう聞けない。

涙が止まらない…止まらないよ、輝…。

輝の優しい言葉が、身体中にしみる。

輝の思いやりの言葉が、心にしみる。

輝の声が、頭の中で何度もリフレインする。

こんな素直じゃない、こんな強がりばかりの私を。

無神経で、非常識で、図々しくて、憎まれ口ばかりの私を。

守りたいだなんて…。

優し過ぎるよ…輝!

私はそんなに、弱く見えるの?

誰かに守って貰わないと生きられない女に、見えるの?

私は…。

まるで、自分に言われてるように思えて、下に響かないように号泣した。

翌朝、泣き腫らした目で仕事へ行く。

食欲もなくて、最近ほとんど食べてないからフラフラする。

輝が居なくなるのは、痛手だ。

痛手と痛感して、不安になったのか一瞬フラついた。

クラッとして、後ろから肩を強く持たれた。

「どうした?調子悪いのか?」

輝の声がして。

ドキッ…

私服姿で輝がちょうど営業所に、やって来ていたのだ。

視界が狭過ぎて、気が付かなった。

「あっ…いっ…いえいえ、すいません。…身が入ってませんでした…。あのっ…だからって、決してやる気がない訳では、ありませんので。…どうもどうも…」

私は、変な日本語ですぐに返して、ソソクサとその場から逃げた。

逃げた先で、肩に触れられた輝の手の温もりを思い出し…。

「クソっ…なんでいつも…私はこうなんだ…」

壁に頭を打ち付けた。

だいたい、身なんてとっくに入ってませんよ。

やる気も、ほとんどありませんしねぇ。

出来る事なら、さっさと帰って布団の中に潜りたい。

潜って思いっきり泣きたいの!

…こんなアホな自分に…。

…こんなに優しい輝が、自分の彼氏だって事に…。

…私は一体、どうしたらいいの…。

神様、仏様、こ先祖様、誰か教えて下さい。

もう、輝が大好きで溜まりません…。





< 87 / 100 >

この作品をシェア

pagetop