恋愛メンテナンス
clean 27 メンテナンス
夕方、家に帰るとアパートの前の道を、ちょうど引越し屋のトラックとすれ違った。

もう運び出したんだ…。

じゃあ、もう101号室はモヌケの殻か…。

やだな…。

また急に足が止まっちゃった。

少し離れた曲がり角から、アパートを一人で見つめていると。

黒塗りの軽自動車が止まっていて、輝が車に乗り込んだ。

輝…。

結局私は彼女なのに、引越しを手伝うパートナーに、妹を選んだ、輝。

ごめん…。

強がるばっかで何一つ、言葉を掛けられない。

私は車が走り去るまで、そこで立ち尽くしていた。

『バイバイ…輝…』

自然消滅で、あなたとの縁は無かった事で…。

なのに、そう思って。

思って、思って…思い込もうとする度に…。

寂しくて悲しくて…心臓が痛くなって…身体中が拒否反応を起こして震え出す。

涙が止まらない…。

寂しいなら素直に寂しいって言え…。

輝の言葉が私を追い詰めていく…。

アパートには、誰もいないのに…。

101号室のインターホンを鳴らして。

ピンポーン…

インターホンの音が、部屋中に響くのを聞き届けて。

輝…?

3回押す前に、怒って出て来てよぉ…。

ドアにへばりついて、涙を流した。

今夜は食が通らない。

通らないどころか、ずっと布団の上で横になりっぱなし。

自分の本心は、寂しいから側に居て欲しいだけなんだけどなぁ。

人事異動だから、側に居てもらうには、自分が輝の側に居なくてはいけない。

要するに私が静岡に行くって事。

男に自分を合わせるって事に、先ず持って抵抗があるんだけどさぁ。

同棲生活…。

それはそれで、束縛だとか押し付けられたりで、自分の時間は間違いなく奪われる。

それも嫌なんだよねぇ。

輝は優しいけど、アレどう見たって亭主関白ってやつ。

威張って仕切って来る奴には、私は絶対逆らって歯向かっちゃうし。

遊びたい時に、気軽に勝手に遊びに行ける。

それも、私の幸せだったりもするんだけどなぁ。

横になってるから、下の気配をすぐに感じちゃう。

しーずーかーすーぎーるー!!

…寂しい。

今頃、実家で家族とワイワイ最後の晩餐をしてるかと思うと…虚しい私。

『どうやら私の言った通りの結末みたい』

モモちゃんにメールした。

しばらくして、

『別れるって事?それでいいの?』

そんなメールの返信に思わず声が出る。

「いい訳ないしぃ…」

また涙が溢れた。




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