ヒカリ
拝啓 T君
こんにちは。君と会わなくなってから
どれくらいたつのだろう。

たまには思い出を
破っては捨てたり
また拾っては繋いだり

あれからずいぶん
遠回りした気がしています。

あのころは君に対して
こんな風に感傷的なきもちになるなんて
想像もしてなかったんだよ ほんとうに。

あの夏の ものすごく暑くかった日
はじめて君と手をつないだときのこと
きっと君は憶えてないんだろうと 思うんだけど

あのとき 君のひんやりした手に驚いて
それから 君の手のひらがとっても
大きいことに驚いて なんだか急に
泣きたくなったんだ。

それで ぱっと手を離しちゃったんだけど
あのときの君の
ちょっとびっくりして
それからちょっと悲しそうにわらった顔が
焼き付いてさ 脳裏に

ずっと離れなかった。

キミは あれからどんなふうに 大人になったのかな
あたしは あれからどんなふうに 変わったのかな

ごめんね こんなてがみ 
もうあたしのことなんて 忘れちゃったよね

でもいいよね どうせ出さない てがみだからね

どうかお元気で

ほんとうに

しあわせでいて。
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