私は異世界の魔法使い?!
だって私この世界の人間なんかじゃないし。
一般人だし。
取り柄も無いし、魔法なんてもってのほか。
どうせここにはミアはいなみたいだし、それならもう降参してしまってこの宮殿を離れていちからミアを探しに行った方がいいんじゃないかな。
「そういえば、さっき風に乗ってミア様の杖を拾いました。先程からチラチラと見ていたようですが、これが欲しかったのでしょう?」
男の周りには風は吹いておらず、長ったらしい前髪を指で払った。
その払った手には、細い二つの枝が連理し、その先端にルビーのような石が付いた杖が握られている。
……ああ、これはもう決定的だな。
うん、やっぱりダメだ。
降参しよう、そうしよう。
だって杖がなければ使い魔とやらを呼ぶ事だって出来ないし。
でもあれを持ってたからといって、呼べたかも分からないんだけど……。
だって呼び出し方も分からないし、カイトも教えてくれなかったし。
そう考えたらカイトって適当だな。
ハナから私に期待なんてしてなかったに違いない。
大体こんな姿だけ主に似てる別人に、あれだけ忠誠を誓っているミアの将来を託すわけが無いもん。
そうだよ、きっとこうなることだって分かってたに違いないんだ。
そう思って、幾度となく斬りつけられた腕を挙げ、口を開いた。
「ーー私……」