私は異世界の魔法使い?!
「さっきも言ったが、俺は鍵を持っていない。だから開け方を知らない」
ここはカイトの意識の中。
普段は聞こえるはずのないワンドの声も聞こえるみたい。
だからなのかな、彼は私の考えてる事を言葉にする前に、その答え言ってくれる。
けれど一番疑問に思ってる事の答えは言ってくれないんだね。
どこか霧に紛れるように、上手く言葉を濁してる。
私は再び疑問を口にしようとしたが、
「さっさと行くぞ。ついて来ないのなら置いていくからな」
そう言って剣で切り裂いた空間の割れ目に手を掛け、足を踏み入れた。
「あっ! ちょっと待ってよ」
カイトが飛び込んだすぐ後を追って、私も切れ目に飛び込んだ。
するとそのすぐ後に切られた空間が縫い合わされたように入り口は塞がれ、目の前に広がる世界は赤と黒のペイズリー柄一色となった。
あの扉の中には、一体何があったのだろう。
ここはカイトの意識の中なのに、そのカイトが扉の鍵を持たないという。
あの扉も他の扉と同じで、過去の記憶と繋がっている訳ではないのだろうか……?
過去の記憶と繋がっているとしても、扉に鍵を付けるほど頑丈に守っている中身とは一体どんなものなのだろう。
モヤモヤとした気持ちを抱えたまま、体はフワフワと無重力に似た空間の中を暫く彷徨っていた。