私は異世界の魔法使い?!
「そうだね、入り口は反対側かもしれないね。迂回しよう」
鼻歌でも歌い出しそうな口ぶり。
「いたぁ!! なにすんのさ、おねぇちゃん!」
気がつけば私の手はノアの耳を掴んでいた。
それも力いっぱいに。
「ノアは飛んでるだけだからいいけど、私は歩いてるんだからねっ。そんな簡単に言わないで」
「そんなこと言ったて、仕方ないじゃないか。僕はおねぇちゃんを抱えて飛ぶなんて出来ないよ。重量オーバーだよ、いたたっ!」
今度は耳を左右に裂いた。
「おねぇちゃんやめて! 耳がちぎれちゃうよ!」
「年頃の女の子に向かってなんて事いうのよ!」
腹立たしこの上ないが、ノアの瞳から涙が溢れ出したのを見てさすがに手を離す。
なんだか私が幼児を虐待してるみたいな気分になるじゃない……。
不満でいっぱいの心を落ち着かせるため、宮殿に目を向けた。
宮殿を取り囲む城壁は私の身長の倍以上はある。
触ってみるとひやりと冷たく、スベスベとした感触。
これはよじ登ることも出来なさそうだな……なんて考えていた時ーー。