私は異世界の魔法使い?!


本当にここに宮殿の入り口があるのだろうか。

もし違っていたら私達は袋のネズミ同然だ。

今や階段下にはどれほどのサイ達がいるのかすらわからない。


「どこ? 入り口なんてないじゃない! どこよっ!」


焦りが込み上げて、口の中がやたらカラカラだ。

乾いた唇が前歯とくっつく。

上手くろれつが回らない。

気持ちだけが空回り、体中から冷たい汗が溢れ出す。


誰か、お願い助けて!

私はこんなところで立ち止まってる暇はないんだから!

ねぇ、お願い。

ほんとにねぇ……開きなさいよ!


焦りはいつしか苛立ちに変わっていた。

気がつけば壁をドンドンと叩いていた。

初めは平手、そのうち拳を握りしめ、天井を壊すつもりで力一杯殴りつけた。


「いい加減にしろっ! 開かないとぶっこわしてやるわよ!!」


そう叫びながら殴りつけた瞬間、


ーーポォォォン……。


どこかで水が滴るような音が鳴った。

それは大きく、澄んだ音。

その音が消えた瞬間、ゆっくりと光が頭上から差し込む。

初めは一筋、それが徐々に広がり、私の頭上では別の景色が広がった。



< 490 / 700 >

この作品をシェア

pagetop