私は異世界の魔法使い?!
この暖かで安心できる場所で、何も考えずただじっとしていたいと思える衝動は、下唇をぎゅっと噛み締めて振り払う。
胸元にあるであろうワンドの欠片を握り締め、見えない視界の中、辺りを見渡した。
研ぎすませ、研ぎすませ。
目が見えなくても空気を感じろ。
小さな物音でも聞き漏らすな。
初めて歩き出した赤子のように、両手を前に突き出し、ゆっくりと歩き出す。
「……カイト、いる?」
呟いた声は響かない。
どこにいく事もなく、消滅した。
「カイト、どこにいるの?」
ちゃんと口を開いたはずなのに、声はこの空間の中ですぐさま消える。
突き出した手に当たるものも何もなく、足音も無く、私はただただ歩き続けるだけ。
カイトはまた、どこかに隠れているのだろうか。
そうだとしたら今の私には何も見えない。
カイトが呼びかけに応じてくれるまで待つしかないのだろうか。
そんな悠長な事は言ってらんないのに。
私はいつになったらカイトを見つけられるのだろう。