マリー
 将と伊代は心配そうに、目を合わせる。二人は目で意見を交わすと、知美を見る。

「もし何かあったら電話してね。わたしの電話を貸すわ」

「いいの?」

「どうせほとんどかかってこないから平気よ」

「ありがとう」

 他愛ない会話で盛り上がっている時、音を立てずにリビングの扉が開けられるのに気づいた。その隙間から冷めた目をした優子が顔を覗かせる。

 彼女は知美と目が合うと、そのままドアを閉めた。

 そして、階段の軋む音が微かに届いていた。

 その時の優子の挑戦的な表情が気になったが、彼女が知美をそんな表情で見たのは一度や二度ではない。そのため、あえて気にしない事にした。


 ごはんを終えると、鼻歌を歌いながら自分の部屋に戻る。

 ドアをあけたとき、暗がりに人の気配を感じた。部屋の入り口にあるスイッチを押すと、白色の光が辺りを包み込む。

 優子が知美の机の傍に立ち、マリーの胴体をわしづかみにしている。優子は不適な笑みを浮かべる。

「何か用?」

「意外と普通の部屋ね」

「だから何?」

 優子はマリーの髪の毛を引っ張る。髪の毛だけつかまれ、腕や足が垂れ下がる。
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