マリー
「あなたがやったの?」

「どう思う?」

 マリーは笑いながらそう言った。

「真美を殺したのもあなたなの?」

 マリーは答えなかったが、答えないことが答えのような気がしていた。

「優子の首を絞めたのも、岡江君を突き飛ばしたのも、全部あなたのせいなの?」

 太陽光の反射を受け、彼女の瞳が時折煌めく。知美は体の熱が一瞬で奪い去られるような寒気を覚え、肩の付け根の部分を抱いた。

「もう止めて。お願いだから誰も傷付けないで」

「じゃあ、あなたは友達を作らない? 恋人も家族も誰も作らない?」

 脳裏に蘇ったのは将の言っていた美佐の話だ。

 彼女は人を遠ざけていた、と。

 知美は唇を噛み締めると、マリーを空いていた鞄の中に突っ込む。

 覚悟を決めたの? 良い心がけね。

 その言葉は耳にではなく、脳に直に文字を刻むように届いていた。
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