マリー
 優子はたじろじ、あからさまに嫌そうな顔をした。

「誰か知らない?」

「十二時くらい。俺んち、あいつの家と近いからさ。その時間に救急車が来て、大騒ぎだったから」

 そう得意げに言ったのは岡江だった。

「知美はその時間、どうしていたの?」

「寝てたし、そんな時間まで起きておけない」

 十時を過ぎれば頭がうつろになる。

「家にいたんだね。知美がいたから火事になったなんてデマもいいところじゃない。それともあなたたちは知美に超能力でも使えて、放火もできるとか本気でそう思っているの?」

 誰も真美の言葉に反論しない。悪魔だ、人殺しだとののしってもそれが非現実的でないと多くの人が感じていたのだろう。

「もし、何か言われたらわたしに言ってね。わたしは知美の味方よ」

「でも真美に何かあったら」

 真美は知美が何を言いたいのか理解したのか、彼女の腕を引くと、教室の外に連れ出す。
< 99 / 206 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop