駅前ベーカリー
「そろそろ本当に眠った方がいいよ、理真さん。」
「…じゃあ、最後に一つだけ。」
「うん。」
「凛玖くんの、キスが好き。」
「っ…そ、れはさ、…してってことだろ?そのおねだりは犯罪級に可愛い。」

 凛玖が少しだけ身体を起こして、理真の顔に唇を寄せた。
 理真の鼻先に落ちてきたキスは甘い音がする。次のキスは額に落ちた。最後のキスは一番長く、唇に。

「…好き。」
「俺も、どれだけキスしても足りないくらいに…好き。」

 凛玖はもう一度額にキスを落とすと、優しく微笑みながら言葉を紡ぐ。

「はい、目を閉じる。じゃないと手離すから。」
「目、閉じます!」
「素直な理真さん、大好き。」

 そっと理真の頭を撫でる。心地よさそうな表情が次第に緩んでいく。
 そして10分も立たないうちに規則正しい寝息が聞こえてきた。

(それにしても今日の理真さんの可愛さはどうかしてるよ、ほんとに。)

「ねぇ、理真さん。」

 問いかけても眠り続ける眠り姫の耳元に唇を寄せる。

「…キスだけじゃ足りないから、早く治して理真さんごと頂戴。」

*fin*

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