性別「少年」属性「乙女」

ちいさな思い

そうして。

ボクはようやく、もうひとつ、大きな忘れ物をしていたことを、思い出した。




「マコト、すっげー進んでるじゃん」


夏休みの宿題の問題集を見せ合って、吉田が、嬉しそうに言う。


「洋平くん、まこちゃんの写してばっかり」

「ちゃんと小論文とかは、自分でやってるじゃんか」


入院してても、宿題は変わらないから。

ボクは、外に出られない分、宿題を進めていた。

吉田とみっちゃんは、2、3日に1回はこうやって、一緒に宿題をしてくれる。

その間にボクが宿題を進めていると、吉田がとても嬉しそうにするから。

ついつい、頑張っちゃうんだ。


「ねぇ、吉田」

「ん?」


ボクのノートを書き写している吉田に、ボクは声をかけた。

吉田が、顔を上げる。


「有希ちゃん、大丈夫?」
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