性別「少年」属性「乙女」
「あ、ごめんね、林くん。林くんだって走りたかったのに。こんな怪我しちゃったのに」
「別にいいよ。……ま、なんとかおまえを走らせてやりたいな、って思ってたのは本当だしさ」
「おまえ、やっぱり」
「吉田だって、できるなら走らせてやりたいって、思ってたろ?思ってただけだよ。誓って、この怪我はわざとじゃねぇし。わざとなら、もうちょっとうまくやるよ、俺は」
「まぁ、わざとできる怪我じゃないよな。……立てるか?」
「ああ。……つっ!」


立ち上がった林くんが、顔をしかめる。
ボクは思わず、林くんを支えた。


「大丈夫?」
「平気だって。歩けるよ。あんまり大げさにしたら、親父が心配するしさ」


あ。
ボクは、気付いた。
林くんも、お父さんのこと、大好き、なんだ。

そうだよね。
だから、リレーで一位になって、お父さんにまた仕事してほしかったんだよね。


「林くん……ボク、勝つよ」
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