幻想
 「そこ、私の席なんだけど」
 とドライな口調を手の平に乗せ、鳥男に向かって頬にビンタを炸裂させた。パチン、と綺麗な音を車内に響く。ひとつにまとまっていた車内がその音でにわかにざわつき出す。
「いきなり何するんだよ」
 と鳥男は頬に手を当てながら、目が泳いだ。
「そこ、私の席なんだけど」
 もう一度、梨花は言った。
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