水底に囁く。
その答えに満足して、ぼくはいちばん手前にある扉に歩いていく。

「さっそく行ってくるよ、人魚さん」

ぼくは扉を開けて、一歩踏み込む。扉の向こうは真っ白な光しかなくて、なにも見えなかったけれど、怖くはなかった。

ずん、と、踏み込んだ足が沈む。ぼくは光の中をずっとずっと落ちていく。

ふわりと吹き飛びそうになる意識を懸命に繋ぎとめるぼくの頭に、人魚さんの声が響いた。

「あなた、名前がないでしょう? わたしの名前をあげるわ。向こうの世界で名前を訊かれたら、マルカと答えなさい」
< 15 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop