水底に囁く。
けれど言ってしまってから、ぼくは

(しまった)

と思った。

人魚の顔が、そのとき悲し気にゆがんだからだ。

「わたしは、行けないの」

人魚が言って、長いまつ毛を伏せた。

「扉の向こうの世界は、陸地ばかりだから。わたしは行っても歩けないし、水がなくてはすぐに干からびて死んでしまうわ。

だから、わたしは独り。

ずっと、独りよ」
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