水底に囁く。
(そっか、そうだよね……)

暗い海の底の宮殿に、長い間たった独りで暮らす。

それはひどく寂しいことだということは、実際に経験しなくてもわかる。

腕がほしいな。

と、ぼくは思った。

例えば、そう。遠い昔に、ぼくがヒトだった頃のように。

もし腕があれば、彼女の寂しげな頭を、ぽんぽんと撫でてあげられるのに。

寂しくないよ。ここにいるよ。そう言って。

そう思ったとき。
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