おとななこども
未だに冷めた目を向けているあたしに、
「桃姉ちゃん、手作りチョコじゃないと彼氏に捨てられちゃうよ?」

真里が不吉なことを言ったのだった。


その翌日、学校でもバレンタインの話題で持ち切りだった。

「ねえ、誰にあげる?」

「サッカー部の吉田くん!」

まだバレンタインデーじゃないって言うのに、よく騒げるものだ。

「ものすごい話題になってるね」

委員長が声をかけてきた。

「そうだね、あたしも家でも散々聞かされてる」

そう返したあたしに、
「あたしねえ、日本史の田川先生にあげようと思ってるんだ♪」

委員長が言った。

「えっ?」

あたしは聞き返した。

日本史の田川先生って確か、
「カワウソにまゆ毛を書いたような、あの田川先生?」
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