略奪ウエディング

「あのね…」

何かを言いかけたその唇を再び塞ぐ。

「ん…、悠…馬」

梨乃は息苦しそうに俺を受け入れている。

「あ…の、…話…できな…」

俺は構わずにその唇を貪るように覆いながら目を閉じる。

しばらくしてから、そっと彼女を見た。
梨乃はとろりとした半目で俺を見返す。

そっと唇を離して言う。

「話…?何?…いい子にしてた?」

「意地悪…」

肩で息を切らしながら可愛く俺を睨む彼女をそっと下ろす。

「意地悪なのは梨乃のほうだよ。会議に集中できなくなりそうだった。牧野にからかわれてしまったよ」

「何…?どういうこと?」

「知らなくてもいいよ…」

首をかしげる彼女を見ながら、美味しそうな香りがすることに気付いた。

「ご飯?」

「ええ。作ったの。…それを言いたかったのに」

「ありがとう。嬉しいよ」

そう言って彼女の額にまたキスをしていた。
きりがない。

「そうだ、来週送別会だって」

「私の?」

「そう」

「本当に?」

嬉しそうに笑う彼女を見て思う。
その席では、気を付けないと。梨乃に甘いところを見られたなら大変だ。

そう思いながら、気付けば彼女の髪を撫でている。
あ。…本当に重症だ、と思った。

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