略奪ウエディング
…キラキラと光る妖艶な瞳。
思わずため息が出そうになるほどに綺麗…。

課長は私を見つめたままネクタイを緩めてスッと引き抜くと、そばにパサリと落とした。
そのまま自分のシャツの首のボタンに手をかけながら言う。

「…いいよ。あげる。…俺を全部。梨乃以外…もう見ないよ」

そう言った直後、課長が私に覆い被さってきた。

私の…ものに…。
その全てを。

「課長…」

「…悠馬でいい。梨乃の、だから」

「――……悠…馬…」

名前を呼んだ途端、彼の動きが激しくなる。

「梨乃…っ」

「…っ…」

私は声にならない息を吐き、その官能の波に溺れていく。

「………たまんないよ…もう……」

「悠……っ、あ……」


――全部欲しい。もっともっと…。その、光る汗の粒すらも。
課長が私のものになったことを私の身体に深く刻んで。
そしてこの気持ちの根源を一つ残らず私の身体の奥から奪っていって。
私は課長の滑らかな背を撫でながら、彼の溢れる情熱に引き込まれるように目の前にあるその綺麗な鎖骨に吸い付いた。

「う……っ、梨乃…」

その瞬間、彼の顔が一瞬歪んだ。
彼の身体に紅く浮かび上がる痕が私をさらに燃え上がらせる。

あなたを愛してる。

その長い指が身体の隅々をなぞる間中、呪文の様に願う。
私以外の誰かに、二度とこんな風にしないで。

いつか…その心までも私のものとなってほしい。

「…どうにか…なりそうだ。…ごめん、…抑えが利かない」

吐息混じりの囁きに、全身がゾクゾクとしてくる。
こんなに幸せで、こんなに愛しいだなんて。想像以上の素晴らしさに涙が止まらない。
あなたとでないときっとここまで感じることはできない。

「梨乃…、君も…俺だけにして…?誰にももう…渡さない」

愛の言葉は私を欲張りにする。さらに欲しいと思わせる。
もっとたくさん囁いて。このまま脳の奥から私を溶かしてしまうほどに。

この恋に立ち向かうために、私に足りないものはおそらく揺るぎない自信なのだと、私は彼の胸に口づけながら思っていた。

狂おしいほどの熱にうなされているような激情。
私たちは飽くことなく何度もお互いを求め合った。



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