略奪ウエディング
そう言って課長はスーツの上着のポケットから小さな箱を取り出した。

それを私の目の前でカパッと開いて見せる。

「え……」

私は息が止まりそうなほどに驚き、両手で口を押さえた。

無数の光を放ち、キラキラと輝く石。
その光が目に飛び込んできた。

「オフィスで渡すつもりなんてなかったんだけど。本当は色々考えてたんだよ?夜景の見えるレストランとか、旅行に連れて行って綺麗な自然の中でとか。
でもさっき宝石店に取りに行ったら、もう一刻も早く渡したくなった。
梨乃が俺のものだって、…『証』が欲しくなった」

「か…ちょ…」

涙で前が見えなくなる。
涙越しに見る、その『証』はさらに煌めいて…。

「また泣く~…。本当に泣き虫だね、梨乃は…。まあそこが可愛いんだけど。
さ、泣いていないで手を出して」

課長が私の左手を握った。
私は泣きながらその手を見る。

そこにスッと指輪がはめられ、私はさらに溢れる涙を滴らせた。

「きっと、幸せにするから。…信じて」

「う…、ふぇ…」

もう十分、幸せだ。
これ以上のことなんて、これからあるのだろうか。
私は課長を見ながら、彼のその笑顔も指輪とともに光る、永遠の輝きなんだと思った。


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