アイスブルー(ヒカリのずっと前)


目を閉じた。
鈴音の顔が思い浮かぶ。
悲しみと、それから憎しみがこみ上げる。
そんな自分が嫌でたまらなかった。


拓海は携帯をポケットから取り出した。

九時。
もう少しで結城がでかける時間だ。


拓海は再び身体を起こし、窓の外を見る。
窓枠にあごをのせ、しばらくぼんやりと団地の入り口を見つめる。
時々携帯を開いて、時計を確認した。


九時をほんの少し回る頃、結城の頭が下に見えた。
脇にクリアケースを抱えて、けだるそうに歩いている。


拓海は声をかけようとして、少しためらう。


何を話す?
全部を話してしまう?


拓海が迷っていると、視線を感じたのか結城が振り返り、拓海を見上げた。


結城は笑みをうかべると片手をあげて「おはよう」と言った。
拓海も手をあげて「おはよう」とかえした。


「どうした?」
強い日差しに目を細めながら、結城が声を張り上げる。

「うん」
拓海はどう返したらいいのかわからず曖昧に返したが、
結城は首を傾げてから「降りてこいよ」と手招きした。


拓海は携帯と財布、それから少し迷ったがカメラをもって、部屋を出た。


「行こう」
結城が拓海を促す。


拓海は頷いて、結城の後に続いた。


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