LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
「深空さん、明日なんだけど…」

 紅茶の上品な薫りが漂う部屋。向かいに座る節子が、ケーキを取り分けながら切り出した。

「あなたの体調が良かったら、雄二と二人で遊びに行ってきたら? そのついでに思い出の場所とか巡れば、思い出すきっかけになるかもしれないでしょ」

 節子は、そう提案して、苺のショートケーキを乗せたお皿を深空の前に置いた。

「あぁ…、そうですね。初詣もいいな。もちろん先生さえよければ…」

 深空は、雄二の顔を見て様子をうかがいながら答えると、雄二は笑顔でうなずいた。

「じゃ、決まりね」

 節子が、ケーキにフォークを入れた瞬間…

「あの、お母さんはお正月はどうされるんですか?」

 深空の質問で、節子の手が止まった。

「私? 私は今日の夕方の新幹線でいったん家に帰るわ。夫と息子と孫が貧しい食生活を送ってるみたいだから。おせち、簡単だけど作って冷蔵庫に入ってるから、二人で食べてね」

 節子はそう答えながら、ほっこりとした笑顔を浮かべ、改めてケーキにフォークを入れる。そして、嬉しそうに口に運んでいた。

「おいしいわよ、ほら、二人とも食べなさいな」

 節子のそんな笑顔を見た二人は、顔を見合わせて、笑う。さっきのモヤモヤが、節子の屈託のないその笑顔を見ただけで軽減したような、深空はそんな気がしていた。

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