LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 その頃、雄二は新横浜駅から新幹線に乗り込んるところであった。

 窓際の席に座り、駅の売店で買った缶コーヒーを開けて、香りを楽しむ間もなく、口付ける。彼は、昨夜の母親との電話の会話を思い出していた。

『今日はあまり発注がないからって敬吾を休ませて、ひかりと遊びに行かせて、お父さん、ひとりで仕事をしていたのよ。そうしたら、夜になっても工場から戻って来なくて、見に行ったら…』

 節子はたまり兼ねて、言葉を詰まらせる。

『…倒れてたの。そこからは必死だったからあまり覚えてないんだけど、病院の先生には、かなり危ういって…。意識が戻るか、駄目かは、何とも言えないそうよ…』

「そうか…」

 力のない返事をすることしか、自分にはできなかった。

『峠は今夜…』

 いつも、冷静沈着な節子でさえ、取り乱していた。それだけ、夫のことを大切に思っているのだろう。当然だった。

 次第に雄二の頭の中は、父、正雄のことを考えはじめていた。

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