LOVE GAME〜あたしの帰る場所〜
 結局抜けられず、逸子に電話で深雪のお迎えをお願いして、深空はそのまま駅長室に残っていた。ふたりの刑事は小声で何かを話した後、若い方の刑事だけ医務室から出て行った。そして、もう一人のヨレヨレの紺のスーツを着た中年の刑事が深空の寝ているベッドに近づいてきた。これから事情聴取が始まろうとしていた。

「えーっと… 沢崎深空さん、ですね。私は二俣川署の木村といいます。本当に命が無事でよかったですね」

 刑事はそう口にしながら彼女に警察手帳を見せた。彼女は、黙ってうなずいた。

「さて、これはただの事故なのか事件なのか… 押されたた時、振り向いたりは?」

 木村は淡々と深空に尋ねている。彼女は、首を横に振った。

「…振り向くヒマもありませんでした。一瞬のことで…」

 眉をひそめながら落ちた瞬間を思い出す深空…。しかし、そうすると白い光が記憶を邪魔して、何も見えなくなっていた。思わず肩を抱き、その時の恐怖を思い出して震えている。

「そうですか… 何か、恨まれるようなことに覚えは?」

「な、無いと思いますけど…」

 そう答えた深空の脳裏には、ある人物の顔がぽんと浮かんだ。

(ま、まさか、ね…)

『深雪ちゃんを、私たち夫婦にください!』

 土下座をし、必死になってそう言っていた翠の姿だ。

(あの人が、こんな手荒なマネ、するはず…)

 深空には、にわかに信じられなかった。

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