婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。




――桜の花びら舞い散る雪城学院に入学する、長谷川真凛ちゃん。


しかし、入学式に参加するため体育館へと向かっていた真凛ちゃんは、途中で転びかけてしまう。


そこで出てくるのが、エセ王子こと敬太様だ。


たまたま近くにいた敬太様は、倒れそうになった真凛ちゃんを咄嗟に助けてあげる。


けれど、真凛ちゃんの美少女っぷりに一瞬硬直してしまった敬太様は、照れ隠しにこう言うのだ。



『どんくせぇ女だな』……と。



「……いえ、漫画として読んでいた時は『照れ隠しだ可愛い!』なんて思いましたけどね!!

実際に言われたら、私は絶対に怒りますわ!これ確定!!」


「星華お嬢様、ご飯の準備が……ってお嬢様!?どうなさったのです!?」



思わず怒りを枕にぶつけて叫んでいたら、たまたま呼びに来た大野さんに見られてしまった。むぅ、不覚。


驚く大野さんに慌てて『今のは忘れて?』とお願いしつつ、私は一生懸命自分に言い聞かせる。



(落ち着け私!今の私は西園寺家の長女、西園寺星華なんだぞ!!)



ペチペチと自分の頬を軽く叩くと、私は朝食を食べるべく大野さんの後について歩き出した。


……どうやら私も、入学式という事でちょっと浮かれているようだ。




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