婚約者から逃げ切るだけの簡単なお仕事です。
「……神様め、いつかぶん殴ってやる」
「あ?なんか言ったか?」
「いいえ、なんでもございませんわ」
私はそう答えると、わざわざ校門で待ち構えていた男――敬太様へ控えめに笑ってみせた。
ちなみに、何故待っていたのか聞いてみたところ
『昨日言ったろ?逃がさない、ってさ』
という言葉とともに真っ黒な笑顔をいただきました。
……いや、そんな有言実行はいりませんから!むしろ迷惑です!!
(はぁ……。これはもう、第一目標を『敬太様から逃げ切る』に変えた方が良さそうね)
私は思わず脱力しながら、前を歩く敬太様の広い背中を見つめた。